問20 | 自動車保険契約が無効や失効となるのは、どのような場合ですか。 |
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- 答え
- モラルリスクのおそれがある場合には、その契約は「無効」となります。なお、自動車保険では、契約が「失効」となる場合は考えにくいとされています。
約款では、保険契約の無効・失効のほか、取消し・解除等の場合の取扱いについて定められています。
(無効)
保険契約には、例えば車両保険において契約時に特定した自動車(以下「被保険自動車」といいます。)に自ら損傷を加えて保険金を取得しようとするなど、不正な保険金請求を行う行為(モラルリスク)が潜んでいることから、保険本来の目的を逸脱しないようにするための対応が求められています。
自動車保険の契約の際にも、モラルリスクを誘発しかねない次の事実があったときには、その契約を「無効」にする対応を行っています。「無効」になると契約は、はじめから成立していなかったことになります。
- ○
- 契約者が、保険金を不法に取得する目的または第三者に保険金を不法に取得させる目的をもって契約を締結したとき
上記の場合においては、保険料は返還されません(注1)。
注1 民法 第708条(不法原因給付)
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
(取消し)
契約者または被保険者の詐欺または強迫によって保険会社が契約を締結した場合には、保険会社は契約者に対する書面による通知をもって、契約を取り消すことができます。
上記の場合においては、保険料は返還されません(注2)。
注2 保険法 第32条(保険料の返還の制限)
保険者は、次に掲げる場合には、保険料を返還する義務を負わない。
- 一
- 保険契約者又は被保険者の詐欺又は強迫を理由として損害保険契約に係る意思表示を取り消した場合
- 二
- 損害保険契約が第五条第一項の規定により無効とされる場合。ただし、保険者が保険事故の発生を知って当該損害保険契約の申込み又はその承諾をしたときは、この限りでない。
【片面的強行規定】
(失効)
「失効」とは、保険金が支払われる事故以外の事由により、保険の対象が消滅した場合に、保険契約が効力を失い終了することをいいますが、自動車保険では、契約が「失効」となる場合は考えにくいとされています。なぜならば、自動車保険は自動車を取りまく様々な危険(リスク)に対応するように設計されており、仮に被保険自動車が全損となってしまった場合であっても、人身傷害保険(「問11」参照)や他車運転危険補償特約(「問18」参照)により、補償が行われることがあり得るからです(契約内容により補償対象としていない場合もあります。)。なお、被保険自動車がなくなって保険の補償が必要なくなった場合には、解除(解約)の手続きを行う必要があります。
保険料分割払特約が付帯(セット)された契約で、契約者から被保険自動車が保険金支払事由によって全損になったとの事故報告を行った場合においても、保険期間中の保険料が全額支払われるまでは、契約は当然には終了せず、銀行口座から分割保険料が引き落とされることがありますので、注意が必要です。
(解除)
保険会社は、例えば、次の場合に契約を解除することができます。
- 1.
- 告知義務違反
- 2.
- 通知義務違反
- 3.
- 保険料不払い(保険料の分割払いにおける保険料未納の場合等)
- 4.
- 重大事由(「重大事由による契約解除」参照)
契約者は、保険会社に対して書面による通知を行うことにより、契約を解除(解約)することができます。
契約が解除された場合は、未経過期間に対して保険会社が定める計算方法で算出された保険料が返還されます。