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くるまの保険 / 任意の自動車保険

問7

対人賠償保険は、
どのような保険ですか。

答え
自動車事故によって他人を死傷させ、法律上の損害賠償責任を負った場合に、自賠責保険で支払われる限度額を超える損害賠償額に対して保険金が支払われる保険であり、自賠責保険を補完する保険といえます。

対人賠償保険における被保険者とは、次のいずれかに該当する者をいいます。

1.
保険証券記載の被保険者(以下「記名被保険者」といいます。)
2.
契約時に特定した自動車(以下「被保険自動車」といいます。)を使用・管理中の次のいずれかに該当する者
  • 記名被保険者の配偶者
  • 記名被保険者またはその配偶者の同居の親族
  • 記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚(これまでに婚姻歴がないこと)の子
3.
記名被保険者の承諾を得て被保険自動車を使用・管理中の者(注1)
4.
記名被保険者の使用者

注1 許諾被保険者
自動車の使用実態にあわせて、記名被保険者の承諾を得て被保険自動車を使用または管理している者も被保険者として取扱っています。このような被保険者を「許諾被保険者」といいます。この承諾は記名被保険者から直接受ける必要がありますが、被保険自動車を第三者が使用することを知りながら、記名被保険者が反対を明示しなかった場合も、直接の承諾があったものとみなされます。

保険金は、損害賠償額が自賠責保険で支払われる限度額を超える場合に、その超過部分につき保険金額を限度に支払われます。また、1回の事故で被害者が複数となった場合には、1名につき、それぞれ保険金額を限度として保険金が支払われます。
なお、上記保険金のほか、被害者が死亡したり、一定日数以上入院した場合には、被害者への香典や見舞金、見舞いや葬儀参列の際に要する交通費などの出費に対応するための臨時費用保険金が支払われる商品もあります。

対人賠償保険で、保険金が支払われない主な場合は、次のとおりです。

1.
契約者、記名被保険者などの故意によって事故が起きた場合の損害
2.
戦争、内乱、暴動などの異常な事態によって生じた損害
3.
地震・噴火またはこれらによる津波によって生じた損害
4.
台風、洪水、高潮によって生じた損害
5.
被保険自動車を競技、曲技もしくは試験のために使用すること、または被保険自動車を競技、曲技もしくは試験を行うことを目的とする場所において使用することによって生じた損害
6.
次の者が被害者になった場合
  • 記名被保険者
  • 被保険自動車を運転中の者またはその父母、配偶者もしくは子
  • 被保険者の父母、配偶者または子
  • 被保険者の業務に従事中の使用人
  • 被保険者の使用者の業務に従事中の他の使用人
対人賠償保険では、被害者救済の観点から、無免許運転、酒気帯び運転などによる事故であっても、保険金が支払われます。

保険金の請求権は、被保険者と損害賠償請求権者との間での判決、裁判上の和解・調停、または示談により、法律上の損害賠償責任の額が確定した時の翌日から起算して、3年を経過した場合に消滅します。

自賠責保険と対人賠償保険には以下のような違いがあります。

  自賠責保険 対人賠償保険
保険金を
支払う場合
「自動車の運行」によって生じた人身事故により負担する法律上の損害賠償責任 「自動車の所有・使用・管理」に起因して生じた人身事故により負担する法律上の損害賠償責任(自賠責保険より広い)
補償範囲 運行供用者・運転者以外の者であれば被保険者の父母・配偶者・子の親族間事故も補償 左記事故は補償しない
保険金を
支払わない場合
  • 契約者・被保険者の悪意(故意が明白であること)により事故を招いた場合および重複契約の場合
  • 加害者(運行供用者・運転者)に責任がない場合
  • 電柱に自ら衝突したようないわゆる自損事故で死傷した場合
  • 自動車の運行による死傷でない場合
  • 被害者が「他人」でない場合
被保険者の故意のほか、戦争・暴動・地震・噴火・台風・洪水・高波・津波・原子力などの危険(リスク)によって生じた損害も免責
被保険者の範囲 被保険自動車の保有者・運転者(対人賠償保険より広い) 1.記名被保険者
2.被保険自動車を使用・管理中の次の者
  • 記名被保険者の配偶者
  • 記名被保険者およびその配偶者の同居の親族
  • 別居の未婚(これまでに婚姻歴がないこと)の子
3.記名被保険者の承諾を得て被保険自動車を使用管理中の者(許諾被保険者)
4.記名被保険者の使用者
過失の扱い 被害者に重大な過失(7割以上)があったときのみ、過失の程度に応じて傷害については20%、死亡・後遺障害については20%・30%・50%の減額を行う(「問35」参照) 民法の一般原則(民法第722条第2項(注2))による過失相殺を行う

注2 民法 第722条(損害賠償の方法及び過失相殺)

1
(略)
2
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

(対人賠償保険における被害者の直接請求について)

対人事故の被害者は、以下の要件を満たす場合には、加害者が契約している保険会社に対して損害賠償額を直接請求することができます。

1.
対人事故により、被保険者に法律上の損害賠償責任が発生していること。
2.
保険会社が被保険者に対して支払責任を負うこと。
被保険者の同意は、損害賠償請求権者の直接請求権発生の要件ではないので、被保険者が同意しないときであっても、被害者の直接請求権は発生し、保険会社は被害者に損害賠償額を支払うことができる。

保険会社は、被害者から直接請求を受けたとき、以下のいずれかに該当する場合に損害賠償額を支払います。

1.
被保険者と損害賠償請求権者の間での判決、裁判上の和解・調停、または示談により、法律上の損害賠償責任の額が確定した場合
2.
損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対して書面で承認した場合
3.
損害賠償額が保険証券記載の保険金額を超えることが明らかとなった場合
4.
被保険者またはその法定相続人の破産または生死不明であった場合、あるいは被保険者が死亡しかつその法定相続人がいない場合

損害賠償額の請求権は、以下のいずれかに該当する場合に消滅します。

1.
法律上の損害賠償責任の額が確定した時の翌日から起算して3年を経過した場合
2.
損害賠償請求権者の被保険者に対する損害賠償請求権が時効によって消滅した場合

対人賠償保険と自賠責保険の被害者請求の違い

  • 対人賠償保険の保険金は被保険者(加害者)が請求することができますが、被害者にも一定の条件のもとで損害賠償額を請求することを認めています。これは、対人賠償保険に備え付けられた示談交渉サービス(「問10」参照)とともに、被害者救済をより充実させるために設けられたものですが、自賠責保険の「被害者請求」とは異なる部分があります。
  • 対人賠償保険の場合は、契約者(および被保険者)と保険会社の契約内容を定めた約款で、保険契約上の第三者である被害者の直接請求権を認めているものであり、被害者が損害賠償額を直接請求するには、あくまで被保険者の保険金請求権が成立していることが前提条件となります。
  • これに対し、自賠責保険の場合は、自賠法第16条によって保障された権利(直接請求権)なので、例えば示談交渉などで加害者と被害者が保険金の支払額を争っていて確定していない状況であっても、自動車の運行による損害賠償責任が発生していれば、被害者はこの権利を行使することが可能になります。
  • なお、対人賠償保険、自賠責保険は、双方とも被害者の先取(さきどり)特権(例えば加害者が破産するおそれがあるときに、被害者が、保険会社に対する加害者の保険金請求権について、他の債権者よりも優先して弁済を受けられる権利)が、保険法に基づき約款に規定されています(「問94」参照)。
●参考文献:
「 自賠責保険のすべて(13訂版)」(保険毎日新聞社)15ページ
「自動車保険の解説2017」(保険毎日新聞社)56ページ

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