解説 | ①保険事故 |
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保険事故とは、保険会社が保険金を支払う要件となる事故のことで、自動車保険における人身事故や火災保険における火災などがこれにあたります。
保険法では保険事故を「一定の偶然の」事故と限定しており(注1)、次の要件を満たさなければ保険事故とは認められません。
偶然性 | 客観的に契約成立時において保険事故が発生する可能性が不確定であること |
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一定性 | 一定の基準に基づいてその範囲が限定されていること |
公序良俗に反しない | 保険事故は公序良俗に反するものであってはならないこと |
- 注1
- 保険法 第2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
- 六
- 損害保険契約 保険契約のうち、保険者が一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約するものをいう。
契約者、被保険者、保険金を受け取るべき者(以下「保険金受取人」といいます。)は、損害(または傷害疾病による治療・死亡等)が発生したことを知ったときは、遅滞なく保険会社に通知しなければなりません。これは、保険法第14条および第79条で規定されています(注2)。
- 注2
- 保険法 第14条(損害発生の通知)
保険契約者又は被保険者は、保険事故による損害が生じたことを知ったときは、遅滞なく、保険者に対し、その旨の通知を発しなければならない。【任意規定】
保険法 第79条(給付事由発生の通知)
保険契約者、被保険者又は保険金受取人は、給付事由が発生したことを知ったときは、遅滞なく、保険者に対し、その旨の通知を発しなければならない。【任意規定】
同じ損害を補償する保険契約を複数にわたり締結している場合(傷害保険や医療保険などの傷害疾病定額保険を除く。)、約款に特段の定めがない限り、どの保険会社に対しても契約に基づき損害額の全額を請求することができます(注3)。
ただし、その保険会社の契約に基づき支払い可能な範囲を超えて保険金は支払われません。したがって、支払われた保険金では損害額の全額に満たない場合などには、他の保険会社に請求する必要があります。
なお、保険金について実損払いを基本とする損害保険では、被保険者は損害額を超えて保険金を受領することはできませんので、他の契約から保険金が支払われた場合には、その支払われた額を差し引いた残額を請求することになります。
- 注3
- 保険法 第20条(重複保険)
損害保険契約によりてん補すべき損害について他の損害保険契約がこれをてん補することとなっている場合においても、保険者は、てん補損害額の全額(前条に規定する場合にあっては、同条の規定により行うべき保険給付の額の全額)について、保険給付を行う義務を負う。【任意規定】
2 二以上の損害保険契約の各保険者が行うべき保険給付の額の合計額がてん補損害額(各損害保険契約に基づいて算定したてん補損害額が異なるときは、そのうち最も高い額。以下この項において同じ。)を超える場合において、保険者の一人が自己の負担部分(他の損害保険契約がないとする場合における各保険者が行うべき保険給付の額のその合計額に対する割合をてん補損害額に乗じて得た額をいう。以下この項において同じ。)を超えて保険給付を行い、これにより共同の免責を得たときは、当該保険者は、自己の負担部分を超える部分に限り、他の保険者に対し、各自の負担部分について求償権を有する。【任意規定】
事故が発生した場合における保険金請求手続きの流れは、概ね次のとおりです。
- 1.
- 事故の連絡
- (1)
- 契約者または被保険者(以下「契約者など」といいます。)は、事故が発生した場合、契約している保険会社または代理店にできるだけ早く連絡をします。
- (2)
- 保険会社は、事故の連絡を受け付けた後に、契約内容の確認を行います。
- 2.
- 保険金の請求から受け取りまでの説明と保険金請求の案内
- (1)
- 保険会社から、事故の内容などに応じて次の事項などについて説明があります。
- 保険金の受け取りまでの流れ
- 契約の保険で補償される内容(受取れる保険金など)
- 契約の保険では補償されない場合はその理由
- 一般的な賠償責任の範囲や示談交渉(損害賠償事故の場合)
- (2)
- 保険会社から、保険金請求書と保険金の請求に必要な書類について案内があります。
- 3.
- 保険金の請求に必要な書類の提出
- (1)
- 契約者などは、保険金の請求に必要な書類を取揃え、保険会社に提出します。
- (2)
- 契約者などから保険金請求書の提出がない場合には、契約している保険会社から請求の意思確認が行われる場合があります。
- 4.
- 損害調査と損害調査への協力
- (1)
- 保険会社は、適切な保険金の支払いのために、事故の状況や損害の状況、治療の経過などについて確認のための調査を行います。契約者などはこの調査に協力してください。
- (2)
- 調査は、保険会社が専門の調査会社に委託して行うことがあります。また、ケガの場合は、本人の同意を得たうえで、医療機関に治療内容などを照会することがあります。
- 5.
- 支払う保険金の説明
- (1)
- 保険会社から、調査の結果と契約内容に基づく支払保険金について説明があります。
- (2)
- 契約者などは、上記内容を確認します。
- (3)
- 事故の内容によっては、保険金が支払われない場合があります。このような場合には、保険会社から、その理由について約款や調査の結果などに基づき説明があります。
- 6.
- 保険金の受け取り
- (1)
- 保険会社から、被保険者または保険金受取人の指定の口座に保険金を支払います。
- (2)
- 保険金の支払いにあたっては、保険会社から書面などで支払額などの案内があります。
- (3)
- 契約者、被保険者、保険金受取人は、上記案内と振り込まれた保険金について、確認します。
損害保険は偶然な事故による損害に対して保険金が支払われますが、保険の種類によっては、損害に対する補償(損害保険金)に加えて、その損害に伴う諸費用に対する保険金(費用保険金)が支払われる場合があります。詳しくは保険金の請求の際に、保険会社または代理店にご確認ください。
保険金の請求に必要な書類には次のようなものがあります。必要書類は、保険金の請求内容により異なりますので、詳しくは保険会社または代理店にご確認ください。
- 1.
- 保険金請求書(保険会社所定のもの)
- 2.
- 事故を証明する書類
- 交通事故証明書(自動車安全運転センター発行)
- 罹災証明書(消防署または市区町村発行)
- 3.
- ケガ・病気の症状、入院・通院の確認書類
- 医師の診断書、診療報酬明細書
- 4.
- 修理費用を確認する書類
- 修理見積書、損害状況がわかる写真
- 5.
- 相手との責任内容を明確化する書類
- 示談書、損害賠償に関する承諾書