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すまいの保険 / 火災保険

問60

火災保険契約が無効や失効となるのは、
どのような場合ですか。

答え
モラルリスクのおそれがある場合には、その契約は「無効」となります。また、保険金支払いの対象とならない事故により、建物の全部が滅失してしまった場合や保険の対象が譲渡された場合には、その契約は「失効」となります。

約款では、保険契約の無効・失効のほか、取消し・解除等の場合の取扱いについて定められています。

(無効)

保険契約には、例えば火災保険において建物に自ら放火して保険金を取得しようとするなど、不正な保険金請求を行う危険(モラルリスク)が潜んでいることから、保険本来の目的を逸脱しないようにするための対応が求められています。

火災保険の契約の際にも、モラルリスクを誘発しかねない次の事実があったときには、その契約を「無効」にする対応を行っています。「無効」になると契約は、はじめから成立していなかったことになります。

  • 契約者が、保険金を不法に取得する目的または第三者に保険金を不法に取得させる目的をもって契約を締結したとき

上記の場合においては、保険料は返還されません(注1)。

注1 民法 第708条(不法原因給付)
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。
ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。

(取消し)

契約者または被保険者の詐欺または脅迫によって保険会社が契約を締結した場合には、保険会社は契約者に対する書面による通知をもって、契約を取消すことができます。

上記の場合においては、保険料は返還されません(注2)。

保険法

注2 保険法 第32条(保険料の返還の制限)
保険者は、次に掲げる場合には、保険料を返還する義務を負わない。

保険契約者又は被保険者の詐欺又は強迫を理由として損害保険契約に係る意思表示を取り消した場合
損害保険契約が第5条第1項の規定により無効とされる場合。ただし、保険者が保険事故の発生を知って当該損害保険契約の申込み又はその承諾をしたときは、この限りでない。

【片面的強行規定】

(失効)

火災保険の契約後、保険金支払いの対象とならない事故により建物の全部が滅失してしまった場合には、火災保険をつける対象物が存在しないため、契約は「失効」する(効力を失う)ことになります。
これに対し、火災で建物が全焼などにより滅失してしまった場合には、火災保険の保険金が支払われるため、契約は「終了」することとし、「失効」と区別しています(「問61」参照)。

「失効」に該当する具体例としては、火災保険で保険金支払いの対象外となっている「地震・噴火またはこれらによる津波」によって建物が全壊してしまった場合や、水災リスクを補償しない火災保険に契約していた建物が洪水によって流失してしまった場合などがあります。

また、建物を譲渡する場合については、所有利益を有する被保険者が変更となるため、契約は失効します。なお、契約者が譲渡前にあらかじめ書面により保険会社に申し出て承認を得ることで、普通保険約款および特約に関する権利・義務を建物の譲受人に移転させることができます。

契約が「失効」となる場合においては、失効の日まで保険による補償が提供されているので、未経過期間に対して保険会社が定める計算方法で算出された保険料が返還されます。

(解除)

保険会社は、例えば、次の場合に契約を解除することができます。

1.
告知義務違反
2.
通知義務違反
3.
保険料不払い(保険料の分割払いにおける保険料未納の場合等)
4.
重大事由(「重大事由による契約解除」参照)

契約者は、保険会社に対して書面による通知を行うことにより、契約を解除(解約)することができます。

契約が解除された場合は、未経過期間に対して保険会社が定める計算方法で算出された保険料が返還されます。

クーリングオフ

  • 保険期間が1年を超える契約については、契約の申込み日または説明書の受領日のいずれか遅い日から8日以内に、書面で保険会社に通知することにより申し込みの撤回または契約の解約を行うこと(クーリングオフ)ができます。(2022年5月施行予定の改正保険業によって、電子メールやウェブサイトなどを通じた電磁的記録によるクーリング・オフの申出も可能となります。)

すまいの保険