問56 | 火災保険では、保険価額よりも保険金額を少なく(または多く)設定した場合に、何か問題はありますか。 |
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- 答え
- 保険価額よりも保険金額を少なく設定した場合には、万が一の場合に損害額どおりの保険金が支払われないことがあります。
保険価額よりも保険金額を少なく設定した場合を「一部保険」といい、逆に保険価額を超える保険金額を設定した場合を「超過保険」といいます。
(一部保険)
火災保険の保険金は、建物または家財の損害額について、保険金額を限度に支払います。保険金額を保険価額(注1)いっぱいに設定していないと、万が一の場合に損害額どおりの保険金が支払われないことがありますので、注意が必要です(注2)。
建物や家財は、時間の経過とともに老朽化などによってその価値が変わっていきますので、必要に応じて保険金額を見直すことが必要です(例えば契約を更新する際など)。
注1 保険価額
損害が生じた地および時における保険の対象の価額をいいます(「問55」参照)。
注2 実損払・比例払
火災保険の保険金は、保険価額に対する保険金額の割合によって支払う下記の「比例払方式」と、実際の損害額を支払う「実損払方式」があります。現在販売されている商品は、再調達価額ベースで実損払方式とする契約が主流となっています。
〈例〉比例払方式
時価2,000万円の建物に保険金額1,000万円の火災保険契約で、建物が半焼して損害額が1,000万円となった場合(保険金額を時価いっぱいに設定していないと、損害額どおりの保険金が支払われません(注3)。)
注3 保険法 第19条(一部保険)
保険金額が保険価額(約定保険価額があるときは、当該約定保険価額)に満たないときは、保険者が行うべき保険給付の額は、当該保険金額の当該保険価額に対する割合をてん補損害額に乗じて得た額とする。【任意規定】
注4 保険価額(時価の場合)に乗じる「一定割合」の設定
上記の注2の〈例〉にある計算式の分母部分の保険価額(時価の場合)に乗じる「一定割合」の具体的な数値(80%など)は、保険会社や保険の種類によって異なります。
(超過保険)
保険金額が保険価額を超えている場合には、保険金は損害額どおりに支払われますが、保険価額を超過した部分について保険金は支払われません。
契約締結時に超過保険となっていた場合、契約者および被保険者が善意で重大な過失がなかったときには超過部分について取消しができます(注5)。この際、保険契約者は超過部分をその保険契約の始期に遡って取り消し、保険料の返還を請求することができます。
なお、保険期間の途中で、家族構成が変わり、家財の状況が大きく変わるなど、家財全体の保険価額が著しく減少した場合には、将来に向かって保険金額を減額することもできます(注6)。この際、その事由が発生した日を基準として、未経過部分に対する保険料が保険会社の定める計算方法に基づき返還されます。
注5 保険法 第9条(超過保険)
損害保険契約の締結の時において保険金額が保険の目的物の価額(以下この章において「保険価額」という。)を超えていたことにつき保険契約者及び被保険者が善意でかつ重大な過失がなかったときは、保険契約者は、その超過部分について、当該損害保険契約を取り消すことができる。ただし、保険価額について約定した一定の価額(以下この章において「約定保険価額」という。)があるときは、この限りでない。【(本文)片面的強行規定、(ただし書き)任意規定】
注6 保険法 第10条(保険価額の減少)
損害保険契約の締結後に保険価額が著しく減少したときは、保険契約者は、保険者に対し、将来に向かって、保険金額又は約定保険価額については減少後の保険価額に至るまでの減額を、保険料についてはその減額後の保険金額に対応する保険料に至るまでの減額をそれぞれ請求することができる。【片面的強行規定】