問55 | 火災保険の保険金額はどのように設定すればよいのですか。 |
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- 答え
- 保険の対象となる建物や家財の評価額を基準に保険金額を設定します。万が一の場合に十分な補償を受けるためには、適正な評価額に基づき保険金額を設定する必要があります。
火災保険の契約にあたっては、建物または家財といった保険の対象となる「財物」を正しく評価する必要があります。なぜなら、火災保険の保険金額は、契約時の評価額を基準として設定するからです。
建物や家財が正しく評価されず適正な保険金額の設定がなされないと、損害額どおりの保険金が支払われない場合があります(「問56」参照)。
特に建物の評価額は年月の経過とともに変動しますので、契約を締結するときだけでなく、契約を更新する都度、建物の価値を正しく評価したうえで、保険金額を定期的に見直すこと(注1)が必要です。
注1 長期契約と自動継続契約の保険金額の見直し
保険期間の設定が長期となる契約(長期契約)の場合、保険期間の中途であっても保険金額を見直すことができますので、必要に応じて保険会社または代理店に確認してください。また、契約者から特段の意思表示がない限り契約が自動的に継続される契約(自動継続契約)についても、契約の更新時などのタイミングに合わせて保険金額を確認してください。
(保険金額の設定方法)
火災保険の保険金額は適正な評価に基づき設定します。評価額には新価(再調達価額)と時価の2つの基準があります。
「再調達価額」とは、保険の対象となる「財物」と同等(同じ構造・用途、質、規模など)のものを現時点で再築または再購入するために必要な金額をベースとした評価額です。「時価額」とは、再調達価額から経年・使用による消耗分(減価)を差し引いた金額をベースとした評価額です。
「再調達価額」と「時価額」の関係を算式で示すと、次のとおりとなります。
時価額 = 再調達価額 − 経年減価額(経年・使用による消耗分)
〔上記算式の補足説明〕
一般的な傾向としては時間の経過とともに、再調達価額は上昇し、時価額は下落していきます。ただし、物価の上昇期には時価額が上昇することもあり、物価の下落期には再調達価額が下落することもあります。
時価額を基準に保険金額を設定した場合、損害額は事故発生時の時価額を基準として算出されるため、保険金だけでは同じ建物を建て直したり買い替えたりすることができなくなる可能性があります。
このような問題を解消し、保険金だけで建て直したり買い替えたりできるようにするために、保険金額を再調達価額で設定する方法が用意されています。現在では、再調達価額の評価額をベースに保険金額を設定する契約(注2)が一般的となっています。
注2 再調達価額による保険金額の設定
再調達価額を基準に保険金額を設定する場合には、「価額協定保険特約」などを付帯(セット)することがあります(再調達価額を基準に保険金額を設定することが基本契約の中に組み込まれている商品もあります。)。
保険の対象が貴金属・宝石・美術品など(注3)の場合で、1個または1組の価額が30万円を超えるときは、商品により、その損害額を30万円とみなしたり、1事故あたりの支払いに限度額(100万円、300万円など)を設けたりしていますので、詳しくは、保険会社または代理店に問い合わせることが必要です。
注3 貴金属・宝石・美術品などの評価額は時価額ベースで設定することになります。
(評価の方法)
正しい評価額を算出するためには、建物の建築価額、建築年、延床面積、世帯主の年齢、家族構成などの情報が必要になります。これらの情報に基づき、次の方法で建物や家財についての評価額を算出するのが一般的になっています。
まず、建物の場合、評価時点で新築物件であれば、その建築価額が評価額(再調達価額)となります。ただし、建築価額に土地代は含まれないことになりますので、不動産の購入価額から土地代を差し引くように留意することが必要となります。
新築物件でない場合には、その建物を新築した年および当時の建築価額が分かっていれば、新築時点から現在(評価する時点)までの価格変動率(これを「建築費倍率」などといいます。)を乗じて再調達価額を推算する方法があります(これを「年次別指数法」または「再取得価額法」などといいます。)。
再調達価額 = 建築価額 × 価格変動率(建築費倍率)
※ 時価額ベースの評価額を算出する場合には、経年・使用による消耗分を差し引きます。
これに対し、新築した年や当時の建築価額が分からない場合には、建物に使われている材料などで定められた「1uあたりの標準的な単価」(新築費単価)に建物の延床面積を乗じて再調達価額を推算する方法があります(これを「新築費単価法」または「概観法」などといいます。)。
再調達価額 = 新築費単価 × 延床面積
※ 時価額ベースの評価額を算出する場合には、経年・使用による消耗分を差し引きます。
なお、マンションなどの場合では、専有部分と共用部分の境界を定める基準(上塗り基準・壁芯基準(注4))により評価額が大きく異なりますので、マンション管理組合の管理規約などで確認する必要があります。
注4 上塗り基準と壁芯基準
マンションの専有部分と共用部分の境界を定める基準には、上塗り基準と壁芯基準があります。
上塗り基準とは、界壁(マンションなどの共同住宅における住戸と住戸の境目の壁)・階層の本体はすべて共用部分であり、専有部分側の上塗り部分だけが専有部分であるとする基準です。この基準では共用部分の範囲が広くなります。
これに対し、壁芯基準とは、界壁・階層の中央部分(壁芯および床の中心線)までの専有部分側が自分の専有部分であるとする基準です。この基準では共用部分の範囲が狭くなります。
家財については、所有している家財の金額を積算するのが基本となりますが、この方法ですと家財ひとつひとつを評価していくことが必要になるので、時間と手間がかかることになります。こうしたことを勘案のうえ、より簡便な方法として世帯主の年齢や家族構成などに応じて平均的な評価額を決める方法が用意されています(保険会社から提示される標準世帯における家財の評価額(目安)を参考に金額を設定するケースが一般的です。)。
家財は各人の家庭生活を維持するために所持する生活用具であり、家財を使用する家族構成などがそのまま家財の内容を反映していると考えられるので、このような方法が用いられています。
〈 家財の標準的な評価額(イメージ) 〉
また、上記とは別に建物の所有形態(所有・賃貸の別)や占有面積などに応じて平均的な評価額を決める方法を用意しているケースもあります。
〈 家財の標準的な評価額(イメージ) 〉