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からだの保険・他 / その他の保険

問90

介入権制度とはどのような制度ですか。

答え
契約者の破産管財人、差押債権者、質権者などの第三者が解約返戻金を債務の弁済にあてるため、契約者が契約していた医療保険などを解除(解約)する場合、被保険者が高齢者であるときなどは再加入することが困難となります。このような場合に、被保険者などの保険金受取人の利益を守ることを目的にして、保険金受取人が解約返戻金相当額を負担することにより契約を存続させるようにしたものです。

生命保険や医療保険・介護保険等については、一旦解除(解約)されてしまうと、被保険者の健康状態や年齢等によっては再加入が困難となってしまう場合があること、また、遺族の生活保障等の機能を損なうことになりかねないことなどから、契約者の破産管財人、差押債権者、質権者などの第三者で契約の解除(解約)をすることができる者(以下「解除権者」といいます。)が、解約返戻金を取得する目的で契約を解除(解約)しようとしたときに、これに対抗して契約を存続させる必要性があると、従来から指摘されていました。

このため、保険法では、介入権制度(注1)を新設し、解除権者が契約を解除(解約)しようとした場合に、解除(解約)の効力が発生するまでの間(保険会社が解除の通知を受けたときから1か月を経過するまでの日)に保険金受取人が解除権者に解約返戻金相当額を支払うこと等により、契約を存続させることができることを規定しています(注2)。

注1 契約の直接の当事者ではない保険金受取人が契約関係に介入することから、「介入権制度」と呼ばれています。

保険法

注2 保険法 第89条(契約当事者以外の者による解除の効力等)
差押債権者、破産管財人その他の傷害疾病定額保険契約(第92条に規定する保険料積立金があるものに限る。以下この条から第91条までにおいて同じ。)の当事者以外の者で当該傷害疾病定額保険契約の解除をすることができるもの(次項及び同条において「解除権者」という。)がする当該解除は、保険者がその通知を受けた時から1か月を経過した日に、その効力を生ずる。【強行規定】
2 保険金受取人(前項に規定する通知の時において、保険契約者である者を除き、保険契約者若しくは被保険者の親族又は被保険者である者に限る。次項及び次条において「介入権者」という。)が、保険契約者の同意を得て、前項の期間が経過するまでの間に、当該通知の日に当該傷害疾病定額保険契約の解除の効力が生じたとすれば保険者が解除権者に対して支払うべき金額を解除権者に対して支払い、かつ、保険者に対してその旨の通知をしたときは、同項に規定する解除は、その効力を生じない。【強行規定】
3 第1項に規定する解除の意思表示が差押えの手続又は保険契約者の破産手続、再生手続若しくは更生手続においてされたものである場合において、介入権者が前項の規定による支払及びその旨の通知をしたときは、当該差押えの手続、破産手続、再生手続又は更生手続との関係においては、保険者が当該解除により支払うべき金銭の支払をしたものとみなす。【強行規定】

介入権制度の対象となる契約は、生命保険や医療保険・介護保険等のうち、被保険者などの保険金受取人への保険金支払いのために保険料を積み立てる契約(満期返戻金のみを積み立てるものは含みません。)に限られます。したがって、保険期間1年以内の傷害保険や自動車保険などは、この制度の対象となりません。

介入権を行使できる者(以下「介入権者」といいます。)は、保険会社が解除権者による契約の解除(解約)の通知を受けた時点における保険金受取人であって、「被保険者」または「契約者・被保険者の親族」である者となります。したがって、契約者については、介入権者になることはできません。

解除権者による解除(解約)の効力は、保険会社が解除(解約)の通知を受けた時から1か月を経過した日に生じるので、この1か月の間に、介入権者が次の3つの要件を満たすことにより、介入権を行使する(解除(解約)の効力を生じさせずに契約を存続させる。)ことができます。

介入権を行使する(契約を存続させる。)ことについて、契約者の同意を得ること
解除権者による解除(解約)の通知を受けた時から1か月以内に、通知があった時点での解約返戻金相当額を解除権者に支払うこと
上記②の支払いの事実について、保険会社に通知すること

なお、保険会社が解除権者から解除(解約)の通知を受けた時から1か月経過しないうちに、保険金を支払って契約が終了するような事由が生じた場合には、保険会社は、解約返戻金相当額を解除権者に支払い、保険金受取人には保険金と解除権者に支払った解約返戻金の差額を支払うこととなります(注3)。

保険法

注3 保険法 第91条【契約当事者以外の者による解除の効力等】
第89条第1項に規定する通知の時から同項に規定する解除の効力が生じ、又は同条第2項の規定により当該解除の効力が生じないこととなるまでの間に給付事由が発生したことにより保険者が保険給付を行うべき場合において、当該保険給付を行うことにより傷害疾病定額保険契約が終了することとなるときは、当該保険者は、当該保険給付を行うべき額の限度で、解除権者に対し、同項に規定する金額を支払わなければならない。この場合において、保険金受取人に対しては、当該保険給付を行うべき額から当該解除権者に支払った金額を控除した残額について保険給付を行えば足りる。【強行規定】
2 前条の規定は、前項の規定による保険者の解除権者に対する支払について準用する。【強行規定】

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