問77 | 傷害保険契約が無効や失効となるのは、 |
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- 答え
- モラルリスクのおそれがある場合には、その契約は「無効」となります。また、被保険者が死亡した場合には、その契約は「失効」となります。
約款では、保険契約の無効・失効のほか、取消し・解除等の場合の取扱いについて定められています。
(無効)
保険契約には、例えば傷害保険において被保険者を殺害して保険金を取得しようとするなど、不正な保険金請求を行う危険(モラルリスク)が潜んでいることから、保険本来の目的を逸脱しないようにするための対応が求められています。
傷害保険の契約の際にも、モラルリスクを誘発しかねない次の事実があったときには、その契約を「無効」にする対応を行っています。「無効」になると契約は、はじめから成立していなかったことになります。
- 1.
- 契約者が、保険金を不法に取得する目的または第三者に保険金を不法に取得させる目的をもって契約を締結したとき
- 2.
- 契約者以外の者を被保険者とする契約について死亡保険金受取人を定める場合(注1)に、その被保険者の同意を得なかったとき(注2)
注1 被保険者の法定相続人を死亡保険金受取人にする場合を除きます。
注2 保険法 第67条(被保険者の同意)
傷害疾病定額保険契約の当事者以外の者を被保険者とする傷害疾病定額保険契約は、当該被保険者の同意がなければ、その効力を生じない。ただし、被保険者(被保険者の死亡に関する保険給付にあっては、被保険者又はその相続人)が保険金受取人である場合は、この限りでない。【強行規定】
2 前項ただし書の規定は、給付事由が傷害疾病による死亡のみである傷害疾病定額保険契約については、適用しない。【強行規定】
契約が「無効」となる場合においては、原則として保険料は返還されます。ただし、契約者が不法な保険金取得目的または第三者に不法な保険金取得をさせる目的で契約をした場合(上記の「1.」の場合)には、保険料は返還されません(注3)。
注3 民法 第708条(不法原因給付)
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
(取消し)
契約者、被保険者または保険金受取人の詐欺または脅迫によって保険会社が契約を締結した場合には、保険会社は契約者に対する書面による通知をもって、契約を取消すことができます。
上記の場合においては、保険料は返還されません(注4)。
注4 保険法 第93条(保険料の返還の制限)
保険者は、次に掲げる場合には、保険料を返還する義務を負わない。
- 一
- 保険契約者、被保険者又は保険金受取人の詐欺又は強迫を理由として傷害疾病定額保険契約に係る意思表示を取り消した場合
- 二
- 傷害疾病定額保険契約が第68条第1項の規定により無効とされる場合。ただし、保険者が給付事由の発生を知って当該傷害疾病定額保険契約の申込み又はその承諾をしたときは、この限りでない。
【片面的強行規定】
(失効)
傷害保険の契約後、被保険者が死亡してしまった場合には、傷害保険をつける対象者が存在しないため、契約は「失効」する(効力を失う)ことになります。
「失効」に該当する具体例としては、傷害保険で保険金支払いの対象外となっている「疾病」によって被保険者が死亡してしまった場合などがあります。
なお、傷害保険には火災保険のように保険金が支払われた場合に契約が「終了」する旨の規定がありません。傷害保険には、企業(団体)が契約者となり、その従業員(複数の人員)を被保険者とする「団体契約」と呼ばれる契約形態があります。このほか、一定の施設内などに収容される不特定多数の入場者や参加者を一括して被保険者とする「包括契約」と呼ばれる契約形態があります。これらの契約形態ですと、例えば、ある一人の方がケガをして亡くなられ死亡保険金が支払われた場合に、その契約を「終了」としてしまうと、改めて契約を締結し直す必要が生じたり、契約を締結し直すまでの間はその他の従業員や入場者などのケガが補償されなくなるという不都合が生じることから、契約の「終了」規定はあえて設けないこととしています。
契約が「失効」となる場合においては、失効の日まで保険による補償が提供されているので、未経過期間に対して保険会社が定める計算方法で算出された保険料が返還されます。ただし、死亡保険金を支払うべき傷害によって被保険者が死亡した場合には、保険料は返還されません。
(解除)
保険会社は、例えば、次の場合に契約を解除することができます。
- 1.
- 告知義務違反
- 2.
- 保険料不払い(保険料の分割払いにおける保険料未納の場合等)
- 3.
- 重大事由(「重大事由による契約解除」参照)
契約者は、保険会社に対して書面による通知を行うことにより、いつでも契約を解除(解約)することができます。
契約が解除された場合は、未経過期間に対して保険会社が定める計算方法で算出された保険料が返還されます。