問73 | 傷害保険の保険金額を無制限にすることはできますか。 |
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- 答え
- 傷害保険の保険金額は、契約時にあらかじめ一定の金額を設定しますので、無制限にすることはできません。
傷害保険は、契約時にあらかじめ一定の保険金額を設定する商品であり、これを無制限にすることはできません。仮に、ケガによる死亡の場合の保険金額を無制限とすると、万が一、ケガで死亡した場合に実際にいくらの保険金を支払えば良いのか、契約者と保険会社の間で見解が異なってしまうなど、保険金の支払いに支障が生じるおそれがあります。
保険金額を無制限とする取扱いは自動車保険の対人賠償保険などで行われていますが、自動車事故の賠償責任については実際に事故が発生してみないと損害賠償額がいくらになるかが分からず、また裁判などで高額な損害賠償判決が下される可能性もあり得ることなどから、無制限とする契約も用意しているという事情があります。
また、傷害保険では犯罪による保険金詐取など、不正な保険金請求を行う危険(モラルリスク)が潜んでいることから、これを防止するために、各保険会社では保険金額に限度額を設定しており、この限度額を超える保険金額で契約することはできないことになっています。
被保険者1名あたりの傷害死亡・後遺障害保険金額は、被保険者の年齢、職業、収入等を勘案し妥当と認められる金額の範囲内で設定されることになります。
なお、契約者と被保険者が異なる契約で被保険者の同意がない場合や被保険者が未成年者(満15歳未満)の場合については、同種の危険(リスク)を補償する他の契約と合算して、1,000万円を引受上限金額としている会社が多いようです(注)。
注 金融審議会「保険の基本問題に関するワーキンググループ」における平成20年7月3日公表の資料 「未成年者・成年者の死亡保険について」において、被保険者の同意がない場合や被保険者が未成年者(満15歳未満)の場合における一般の傷害保険(海外旅行保険を除く。)については、『一時払いを含み、1,000万円を引受上限金額とする』との内容が示されました。
日本損害保険協会では、保険犯罪の発生を未然に防止するため、死亡・後遺障害保険金、入院・通院保険金などを支払う契約(傷害保険契約など)の内容を登録し、保険会社が重複保険契約(同一被保険者の身体を対象とした複数の契約)の有無を確認する「契約内容登録制度」を実施しています。
この制度に登録されている内容(データ)は次のとおりですが、各保険会社は登録データによる重複保険契約の内容を通して、傷害保険契約などの被保険者の自社引受け分・他社引受け分をあわせた合計保険金額が高額になっていないかなどについても確認しています。
- 1.
- 取扱保険会社名、保険種類、証券番号
- 2.
- 保険契約者の氏名、住所、生年月日
- 3.
- 被保険者の氏名、住所、生年月日、性別、同意の有無
- 4.
- 死亡保険金受取人の氏名
- 5.
- 死亡・後遺障害保険金額、入院保険金日額、通院保険金日額
- 6.
- 保険期間
日本損害保険協会・生命保険協会の
「契約内容登録制度」の違い
- 生命保険協会でも生命保険制度の健全な運営などを目的として「契約内容登録制度」を実施しています。生命保険において、保険募集人である営業職員は契約締結権を有していないのが一般的です。このため、生命保険会社は、契約の申込みがあった場合、契約成立前に、その内容(死亡保険金額、入院給付金日額等)を「契約内容登録制度」に登録し、契約内容を照会することによって、重複保険契約の有無や自社引受け分・他社引受け分をあわせた合計保険金額を知ることが可能となります。このように、生命保険会社では、この制度を契約の申込みに対する「承諾可否などの判断の参考」に利用しています。
- 一方、損害保険においては、保険募集人である代理店が契約締結権を有しているのが一般的です。このため、損害保険会社は、契約成立後に、告知書の内容や「契約内容登録制度」を通して、重複保険契約の有無や自社引受け分・他社引受け分をあわせた合計保険金額を知ることになります。そして、合計保険金額が妥当と判断されれば、必要に応じて「追加告知書」などを取り付けたうえで契約を存続させ、合計保険金額が高額であると判断されれば、契約を解除または契約の更新を謝絶するなどの対応をとることになります。つまり、損害保険会社では、この制度を「契約存続の判断の参考」に利用しています。
- なお、生命保険協会の制度は、全国共済農業協同組合連合会(JA共済)の契約データと相互にデータ照会を行っており、この点についても日本損害保険協会の制度とは取扱いが異なります。