問79 | 遺言によって、傷害保険の死亡保険金受取人を変更することはできますか。 |
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- 答え
- 契約者は、法律上有効な遺言によって、傷害保険の死亡保険金受取人の変更を行うことができます。
従来の商法では、遺言による保険金受取人の変更について明確な規定がなかったため、遺言によって保険金受取人の変更をすることができるかどうかについては見解が分かれていました。しかし、保険法においては、超高齢社会における遺言の重要性の観点や契約者のニーズ等も踏まえ、遺言による保険金受取人の変更ができることが明確化されました(注1)。
したがって、契約者は、遺言によって傷害保険の死亡保険金受取人の変更を行うことができます(注2)。ただし、遺言については、民法の規定があり、遺言自体が有効なものでなければ、保険金受取人の変更についても無効となりますので注意が必要です。
さらに、保険会社は、遺言による保険金受取人の変更があったことをただちに知ることはできないので、保険会社が遺言の事実を知らずに保険金を二重に請求されることがないようにするために、遺言によって保険金受取人の変更が行われた場合には、契約者の相続人が保険会社に通知をしなければ、保険会社に対抗できない(通知が到達する前に、保険会社が旧保険金受取人に対して行った保険金支払いは有効)こととなります(注1)。
なお、一定の合理性があれば、遺言による保険金受取人の変更を認めないとする契約も可能であるため、保険会社または代理店に確認しておくことが大切です。
注1 保険法 第73条(遺言による保険金受取人の変更)
保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができる。【任意規定】
2 遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができない。【強行規定】
注2 傷害保険普通保険約款
第32条(死亡保険金受取人の変更)
- (1)
- 保険契約締結の際、保険契約者が死亡保険金受取人を定めなかった場合は、被保険者の法定相続人を死亡保険金受取人とします。
- (2)
- 保険契約締結の後、被保険者が死亡するまでは、保険契約者は、死亡保険金受取人を変更することができます。
- (3)
- (2)の規定による死亡保険金受取人の変更を行う場合には、保険契約者は、その旨を当会社に通知しなければなりません。
- (4)
- (3)の規定による通知が当会社に到達した場合には、死亡保険金受取人の変更は、保険契約者がその通知を発した時にその効力を生じたものとします。ただし、その通知が当会社に到達する前に当会社が変更前の死亡保険金受取人に保険金を支払った場合は、その後に保険金の請求を受けても、当会社は、保険金を支払いません。
- (5)
- 保険契約者は、(2)の死亡保険金受取人の変更を、法律上有効な遺言によって行うことができます。
- (6)
- (5)の規定による死亡保険金受取人の変更を行う場合には、遺言が効力を生じた後、保険契約者の法定相続人がその旨を当会社に通知しなければ、その変更を当会社に対抗することができません。なお、その通知が当会社に到達する前に当会社が変更前の死亡保険金受取人に保険金を支払った場合は、その後に保険金の請求を受けても、当会社は、保険金を支払いません。
- (7)
- (2)および(5)の規定により、死亡保険金受取人を被保険者の法定相続人以外の者に変更する場合は、被保険者の同意がなければその効力は生じません。
- (8)
- 死亡保険金受取人が被保険者が死亡する前に死亡した場合は、その死亡した死亡保険金受取人の死亡時の法定相続人(注)を死亡保険金受取人とします。
- (注)
- 法定相続人のうち死亡している者がある場合は、その者については、順次の法定相続人とします。
- (9)
- 保険契約者は、死亡保険金以外の保険金について、その受取人を被保険者以外の者に定め、または変更することはできません。
※ 保険会社により約款は異なります。詳しくは保険会社または代理店にお問い合わせください。