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共通 / Ⅳ.損害保険の契約について

解説

①損害保険の契約の申込み・成立

損害保険の契約の申込み
損害保険は、通常、保険会社が用意している申込書を使用して代理店を通じて申込むことになります。保険会社や保険の種類によっては、電話やインターネットでの申込みという方法もあります。

損害保険の契約はいつ成立するか

1.
損害保険の契約は、いわゆる民法上の諾成契約(お互いが口頭で契約について了解するだけで成立する契約)であるとされ(注1・注2)、保険の対象(になる物・人)・保険金額・補償内容などの重要な部分(契約の要素)が確定し、契約者による申込みの意思表示と保険会社側の承諾の意思表示があれば、契約は成立します。

注1 民法 第555条(売買)
売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

民法 第559条(有償契約への準用)
この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

保険法

注2 保険法 第2条(定義)第1号・第6号
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

保険契約 保険契約、共済契約その他いかなる名称であるかを問わず、当事者の一方が一定の事由が生じたことを条件として財産上の給付(生命保険契約及び傷害疾病定額保険契約にあっては、金銭の支払に限る。以下「保険給付」という。)を行うことを約し、相手方がこれに対して当該一定の事由の発生の可能性に応じたものとして保険料(共済掛金を含む。以下同じ。)を支払うことを約する契約をいう。
損害保険契約 保険契約のうち、保険者が一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約するものをいう。
2.
実務上は、保険会社または代理店が、契約者から提出された申込書が適正であることを確認し、受理した時点で契約が成立します。成立までの手順は、具体的には次のようになります。

(1)
顧客の意向把握
代理店から、所属保険会社名や募集人の氏名、告知受領権の有無などについて説明を受けます。
代理店は、保険加入の意向(ニーズ)について、例えばアンケート等により、情報を求めます。
(2)
意向に合致した商品説明
代理店から提案のあった保険に関して、重要事項説明書などをもとに説明を受け、確認します。
(3)
意向確認
契約しようとする保険商品が自分のニーズに合致した補償内容であることを確認するための書面などに記入します。
(4)
申込書などへの署名または記名押印
所定の申込書に必要事項を記入し、署名または記名押印のうえ、保険会社または代理店に提出します。保険会社または代理店が、申込書が適正であることを確認し、受理した時点で契約が成立します。
(5)
申込書写の受領
申込書の写を受領します。
(6)
保険料の払込み
約款上、契約が成立しても、保険料が払い込まれていない場合、損害が生じても保険金が支払われません。
(7)
保険証券の受領
保険会社から契約をした保険の保険証券を受領します。

なお、自動的に契約を更新するように設定した場合には、契約者が継続を承諾した時点で契約が成立します。

損害保険の契約ができない場合

1.
損害保険は、原則として金銭に見積もることができる経済的な利益がない場合には、契約することができません(注3)。これがないのにも関わらず保険金が支払われるとなると、犯罪を助長することにつながるおそれがあるためです。

保険法

注3 保険法 第3条(損害保険契約の目的)
損害保険契約は、金銭に見積もることができる利益に限り、その目的とすることができる。
【強行規定】

なお、人の命は金銭に見積もることが困難であることから、定額払い方式の傷害保険などでは、この利益の存在は要件とはなりません。

2.
また、契約の申込みがあった場合、例えば、事故発生度の高い契約が集中することによって適正な保険料率を維持できなくなり、他の多くの契約者に負担がかかると判断されるようなときには、保険会社は例外的に契約を断ることがあります。また、このような場合でなくても、故意に事故を起こして不正に保険金を得ようとする可能性がある契約である場合などでは、保険会社の方針として契約を断ることがあります(契約の謝絶)。
3.
地震保険では、「大規模地震対策特別措置法」(注4)に基づき警戒宣言が発令されたときは、指定された地域内の物件については、警戒宣言が解除されるまでの間は、新規の契約や既存契約の保険金額の増額には応じられないことになっています。
注4
地震保険に関する法律 第4条の2(警戒宣言が発せられた場合における地震保険契約の締結の停止)

大規模地震対策特別措置法(1978年法律第73号)第9条第1項の規定に基づく地震災害に関する警戒宣言(以下この条において「警戒宣言」という。)が発せられたときは、同法第3条第1項の規定により地震防災対策強化地域として指定された地域のうち当該警戒宣言に係る地域内に所在する保険の目的については、保険会社等は、当該警戒宣言が発せられた時から同法第9条第3項の規定に基づく地震災害に関する警戒解除宣言が発せられた日(当該警戒宣言に係る大規模な地震が発生するに至った場合にあっては、財務大臣が地震保険審査会の議を経て告示により指定をする日)までの間、政府の再保険契約に係る地震保険契約(政令で定めるものを除く。)を新たに締結することができない。

4.
自賠責保険については、交通事故の被害者救済の観点から、ごく一部の例外を除き、保険会社は契約を断ることができないことになっています(注5)。
注5
自動車損害賠償保障法 第24条(責任保険及び責任共済の契約の締結義務)

保険会社は、政令で定める正当な理由がある場合を除き、責任保険の契約の締結を拒絶してはならない。

告知義務

1.
告知義務とは、契約者または被保険者(保険の補償を受ける人または保険の対象になる人)が契約締結にあたり(主として申込書を提出するにあたって)、危険(損害の発生の可能性または給付事由の発生の可能性)に関する重要な事項のうち保険会社が申込書記載事項とすることなどによって告知を求めた事項(告知事項)について事実を告げる義務をいいます(注6)。

保険法

注6
保険法 第4条(告知義務)

保険契約者又は被保険者になる者は、損害保険契約の締結に際し、損害保険契約によりてん補することとされる損害の発生の可能性(以下この章において「危険」という。)に関する重要な事項のうち保険者になる者が告知を求めたもの(第28条第1項及び第29条第1項において「告知事項」という。)について、事実の告知をしなければならない。【片面的強行規定】

保険法 第66条(告知義務)
保険契約者又は被保険者になる者は、傷害疾病定額保険契約の締結に際し、給付事由(傷害疾病による治療、死亡その他の保険給付を行う要件として傷害疾病定額保険契約で定める事由をいう。以下この章において同じ。)の発生の可能性(以下この章において「危険」という。)に関する重要な事項のうち保険者になる者が告知を求めたもの(第84条第1項及び第85条第1項において「告知事項」という。)について、事実の告知をしなければならない。【片面的強行規定】

2.
保険制度は、多くの人々が保険料を出し合うことによって成り立っており、契約者が負担する保険料は「危険(損害の発生の可能性または給付事由の発生の可能性)の程度」に見合った公平なものにする必要があります。しかし、「危険(損害の発生の可能性または給付事由の発生の可能性)の程度」は個別に異なっており、その情報は契約者などが知っていて保険会社には分からないので、保険料に反映させるには契約者などから正確な情報を提供していただくことが必要になります。
3.
そのために保険会社は、約款で契約者または被保険者に事実を正しく告げる告知義務を求めています。
従来の商法では、告知義務は契約者が保険会社に対して、「重要な事実」を自主的に告知する義務(自主申告義務)とされていました。しかし、何が「重要な事実」であるかを契約者が判断することは困難であることから、保険法では、契約者または被保険者が契約締結にあたり、保険会社から告知を求められたものに対して、正しく事実を告げる義務(質問応答義務)に変換しています。
4.
保険会社では、告知事項が明確に分かるように、申込書に「★」や「※」等の印を表示するなど、分かりやすさに努めています。
(1)
自動車保険の告知事項の具体例
「くるまの保険」編の「問19」を参照
(2)
火災保険の告知事項の具体例
「すまいの保険」編の「問59」を参照
(3)
傷害保険の告知事項の具体例
「からだの保険・他」編の「問76」を参照
(4)
医療保険の告知事項の具体例
「からだの保険・他」編の「問86」を参照

告知義務違反による解除

1.
契約者や被保険者が、告知事項について故意または重大な過失により事実の告知をせず、または事実と異なることを告知した場合(以下「告知義務違反」といいます。)は、保険会社は契約を解除することができます(注7)。

保険法

注7
保険法 第28条(告知義務違反による解除)

保険者は、保険契約者又は被保険者が、告知事項について、故意又は重大な過失により事実の告知をせず、又は不実の告知をしたときは、損害保険契約を解除することができる。【片面的強行規定】
2 保険者は、前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、損害保険契約を解除することができない。

損害保険契約の締結の時において、保険者が前項の事実を知り、又は過失によって知らなかったとき。
保険者のために保険契約の締結の媒介を行うことができる者(保険者のために保険契約の締結の代理を行うことができる者を除く。以下「保険媒介者」という。)が、保険契約者又は被保険者が前項の事実の告知をすることを妨げたとき。
保険媒介者が、保険契約者又は被保険者に対し、前項の事実の告知をせず、又は不実の告知をすることを勧めたとき。

【片面的強行規定】
3 前項第2号及び第3号の規定は、当該各号に規定する保険媒介者の行為がなかったとしても保険契約者又は被保険者が第1項の事実の告知をせず、又は不実の告知をしたと認められる場合には、適用しない。【片面的強行規定】
4 第1項の規定による解除権は、保険者が同項の規定による解除の原因があることを知った時から1箇月間行使しないときは、消滅する。損害保険契約の締結の時から5年を経過したときも、同様とする。【強行規定】

保険法 第84条(告知義務違反による解除)
保険者は、保険契約者又は被保険者が、告知事項について、故意又は重大な過失により事実の告知をせず、又は不実の告知をしたときは、傷害疾病定額保険契約を解除することができる。【片面的強行規定】
2 保険者は、前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、傷害疾病定額保険契約を解除することができない。

傷害疾病定額保険契約の締結の時において、保険者が前項の事実を知り、又は過失によって知らなかったとき。
保険媒介者が、保険契約者又は被保険者が前項の事実の告知をすることを妨げたとき。
保険媒介者が、保険契約者又は被保険者に対し、前項の事実の告知をせず、又は不実の告知をすることを勧めたとき。

【片面的強行規定】
3 前項第2号及び第3号の規定は、当該各号に規定する保険媒介者の行為がなかったとしても保険契約者又は被保険者が第1項の事実の告知をせず、又は不実の告知をしたと認められる場合には、適用しない。【片面的強行規定】
4 第1項の規定による解除権は、保険者が同項の規定による解除の原因があることを知った時から1箇月間行使しないときは、消滅する。傷害疾病定額保険契約の締結の時から5年を経過したときも、同様とする。【強行規定】

2.
ただし、代理店が、契約者や被保険者の告知を妨害した場合、または事実を告げないこともしくは事実と異なることを告げることを勧めた場合などは、保険会社は契約を解除することはできません。
3.
また、保険会社が契約解除の原因があることを知ったときから1か月、または契約締結時から5年を経過すると、保険会社は契約を解除することができません。

解除による効果

1.
告知義務違反による契約の解除は、将来に向かってのみ、その効力が生じて契約が終了し、解除前に遡及して契約が終了することはありません。また、契約の解除後に発生した保険事故による損害(または傷害疾病)に対しては、当然、保険会社は保険金を支払いませんが、契約の解除前に発生した保険事故による損害(または傷害疾病)に対しても、保険会社は保険金を支払いません。なお、すでに保険金を支払っている場合には保険金の返還を請求できます。
2.
ただし、告知義務違反にあたる事実と保険事故による損害(または傷害疾病)との間に因果関係が認められない場合は、保険会社は保険金を支払います(注8)。なお、告知義務違反にあたる事実と保険事故による損害(または傷害疾病)の間の因果関係に関する立証責任は契約者側が負うこととなります。
(1)
火災保険において告知義務違反にあたる事実と保険事故による損害との間に因果関係が認められない場合の具体例
「すまいの保険」編の「問59」を参照
(2)
傷害保険において告知義務違反にあたる事実と傷害との間に因果関係が認められない場合の具体例
「からだの保険・他」編の「問76」を参照
(3)
医療保険において告知義務違反にあたる事実と傷害疾病との間に因果関係が認められない場合の具体例
「からだの保険・他」編の「問86」を参照

保険法

注8
保険法 第31条(解除の効力)

損害保険契約の解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。【片面的強行規定】
2 保険者は、次の各号に掲げる規定により損害保険契約の解除をした場合には、当該各号に定める損害をてん補する責任を負わない。

第28条第1項 解除がされた時までに発生した保険事故による損害。ただし、同項の事実に基づかずに発生した保険事故による損害については、この限りでない。
第29条第1項 解除に係る危険増加が生じた時から解除がされた時までに発生した保険事故による損害。ただし、当該危険増加をもたらした事由に基づかずに発生した保険事故による損害については、この限りでない。
前条 同条各号に掲げる事由が生じた時から解除がされた時までに発生した保険事故による損害

【片面的強行規定】

保険法 第88条(解除の効力)
傷害疾病定額保険契約の解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。【片面的強行規定】
2 保険者は、次の各号に掲げる規定により傷害疾病定額保険契約の解除をした場合には、当該各号に定める事由に基づき保険給付を行う責任を負わない。

第84条第1項 解除がされた時までに発生した傷害疾病。ただし、同項の事実に基づかずに発生した傷害疾病については、この限りでない。
第85条第1項 解除に係る危険増加が生じた時から解除がされた時までに発生した傷害疾病。ただし、当該危険増加をもたらした事由に基づかずに発生した傷害疾病については、この限りでない。
第86条 同条各号に掲げる事由が生じた時から解除がされた時までに発生した給付事由

【片面的強行規定】

3.
告知義務違反により契約が解除された場合、未経過期間に対し保険会社が定める計算方法で算出された保険料が返還されます。

保険法

告知義務違反の対応のイメージ

  • 保険会社が告知を求めた事項が3項目(①〜③)あり、これらすべての項目に契約者または被保険者が該当しているにも関わらず、①については正しく告知を行わない(不告知・不実告知)ため告知義務違反があり、②・③については正しく告知が行われている契約があったとします。
  • このときに、まず②の告知事項と因果関係が認められる保険事故(上記の※1の事故)により損害が発生した場合には、保険会社は保険金を支払います。
  • 次に、①の告知事項と因果関係が認められる保険事故(上記の※2の事故)により損害が発生し、保険会社が契約内容を確認したところ、告知義務違反であったことが発覚した場合には、契約が解除され、保険金は支払われません。なお、契約解除日から契約終了日までの期間に相当する保険料については、保険会社が定める計算方法で算出された保険料が返還されます。
  • そして、告知義務違反による契約の解除は、将来に向かって効力を及ぼすので、契約解除日以降に発生した保険事故(上記の※3の事故)による損害については、③の告知事項に正しく告知が行われている場合であっても保険金は支払われません。

意向把握・確認と情報提供
保険会社または保険募集人は、保険の勧誘において、①顧客の意向を把握し、②これに沿った保険契約の締結等の提案、③当該保険契約の内容の説明、④保険契約の締結等に際して顧客の意向と当該保険契約の内容が合致していることを顧客が確認する機会を提供することが改正保険業法(注9)によって求められています(保険会社、保険募集人の意向把握・確認義務といいます)。
さらに、保険会社または保険募集人は、保険の勧誘において、保険契約の内容その他保険契約者等に参考となる情報を提供することが、改正保険業法(注9)によって求められています(情報提供義務といいます)。
保険募集においては、従来の募集規制(一定の不適切な行為の禁止)に加え、顧客ニーズの把握に始まり保険契約の締結に至る募集プロセスの各段階におけるきめ細やかな対応の実現に向け、積極的な顧客対応を求めるために、改正保険業法によって二つの義務が明文化されました。

注9
保険業法

第294条の2(顧客の意向の把握等)
保険会社等若しくは外国保険会社等、これらの役員(保険募集人である者を除く。)、保険募集人又は保険仲立人若しくはその役員若しくは使用人は、保険契約の締結、保険募集又は自らが締結した若しくは保険募集を行った団体保険に係る保険契約に加入することを勧誘する行為その他の当該保険契約に加入させるための行為に関し、顧客の意向を把握し、これに沿った保険契約の締結等(保険契約の締結又は保険契約への加入をいう。以下この条において同じ。)の提案、当該保険契約の内容の説明及び保険契約の締結等に際しての顧客の意向と当該保険契約の内容が合致していることを顧客が確認する機会の提供を行わなければならない。ただし、保険契約者等の保護に欠けるおそれがないものとして内閣府令で定める場合は、この限りでない。

第294条(情報の提供)
保険会社等若しくは外国保険会社等、これらの役員(保険募集人である者を除く。)、保険募集人又は保険仲立人若しくはその役員若しくは使用人は、保険契約の締結、保険募集又は自らが締結した若しくは保険募集を行った団体保険(団体又はその代表者を保険契約者とし、当該団体に所属する者を被保険者とする保険をいう。次条、第二百九十四条の三第一項及び第三百条第一項において同じ。)に係る保険契約に加入することを勧誘する行為その他の当該保険契約に加入させるための行為(当該団体保険に係る保険契約の保険募集を行った者以外の者が行う当該加入させるための行為を含み、当該団体保険に係る保険契約者又は当該保険契約者と内閣府令で定める特殊の関係のある者が当該加入させるための行為を行う場合であって、当該保険契約者から当該団体保険に係る保険契約に加入する者に対して必要な情報が適切に提供されることが期待できると認められるときとして内閣府令で定めるときにおける当該加入させるための行為を除く。次条及び第三百条第一項において同じ。)に関し、保険契約者等の保護に資するため、内閣府令で定めるところにより、保険契約の内容その他保険契約者等に参考となるべき情報の提供を行わなければならない。ただし、保険契約者等の保護に欠けるおそれがないものとして内閣府令で定める場合は、この限りでない。

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