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からだの保険・他 / 傷害保険

問71

傷害保険における「急激・偶然・外来の事故」とは、どのような事故をいうのですか。

答え
突発的(急激)に、たまたま(偶然)、被保険者の身体の外部からの作用(外来)によって生じる事故のことをいいます。

傷害保険は「急激・偶然・外来の事故」によって「人の身体に傷害」が生じた場合に補償を行う保険です。このため、これらの要件にすべて該当しなければ傷害保険の対象にはなりません(注)。

注 傷害保険普通保険約款
第2条(保険金を支払う場合)

(1)
当会社は、被保険者が日本国内または国外において急激かつ偶然な外来の事故(注)によってその身体に被った傷害に対して、この約款に従い保険金を支払います。
(注)以下「事故」といいます。
(2)
(1)の傷害には、身体外部から有毒ガスまたは有毒物質を偶然かつ一時に吸入、吸収または摂取した場合に急激に生ずる中毒症状(注)を含みます。ただし、細菌性食中毒およびウイルス性食中毒は含みません。
(注)継続的に吸入、吸収または摂取した結果生ずる中毒症状を除きます。

※ 保険会社により約款は異なります。詳しくは保険会社または代理店にお問い合わせください。

1.
事故の急激性
「急激」とは、一般的に「事故が突発的で傷害発生までの過程において時間的間隔がないことや事故の発生が被保険者にとって予測・回避できないものであったこと」などと解されています。例えば、交通事故により傷害を被った場合には急激性があるといえますが、靴ずれやしもやけなどは、継続的な行為によって引き起こされた結果であり、急激性があるとはいえません。
2.
事故の偶然性
「偶然」とは、一般的に「事故の原因または結果の発生が被保険者とって予知できないことや被保険者の意思に基づかないこと」などと解されています。①原因が偶然であること(階段で足を踏みはずすなど)、②結果が偶然であること(荷物を持ち上げて腰を痛めるなど)、③原因と結果がともに偶然であると(道路で転んだところを走ってきた車にひかれるなど)のいずれかであることが必要です。反対に、例えば足の骨折治療中にボールを蹴って悪化させた場合などは十分に結果を予測することができるので、偶然性があるとはいえません。
3.
事故の外来性
「外来」とは、一般的に「事故の原因が被保険者の身体外部からの作用によること」などと解されています。事故の原因が外来であれば、必ずしも身体の外部に傷害の痕跡を有する必要はないので、例えば溺死や窒息死なども傷害保険の補償対象ということになります。
なお、従来は疾病を原因とした傷害は補償の対象外となるのが一般的でしたが、疾病免責条項がない商品の場合は、疾病を原因とした傷害(例えば、自動車を運転中に狭心症によって意識が無くなり交通事故を起こしてケガした場合など)であっても補償される場合があります。ただし、傷害保険においては、疾病免責条項のある商品が一般的ですので、疾病を原因とした傷害は補償されないことになります。
4.
身体の傷害性
ここでいう「傷害性」とは、いわゆる「ケガ」よりはやや広い意味を有し、例えば有毒ガスなどの吸入による中毒症状も、急激・偶然・外来の事故によるものならば含まれます。ただし、食中毒(「細菌性食中毒」「ウイルス性食中毒」)は補償の対象外としていることから、例えば病原性大腸菌であるO-157による食中毒は保険金支払いの対象にはなりません。

「特定感染症危険補償特約」による補償

  • 食中毒(「細菌性食中毒」「ウイルス性食中毒」)は補償の対象外ですが、保険会社によっては「特定感染症危険補償特約」を用意しており、この特約を付帯(セット)することで、特定感染症(「感染症法」に規定する感染症のうち、一類感染症から三類感染症まで)を発病したときに、補償(入院保険金・通院保険金・後遺障害保険金などの支払い)を受けることができます。
  • 「感染症法」(正式名称「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(1998年施行))は、一類から三類までの感染症について次のとおり規定しています(2022年1月現在)。
類型 感染症名
一類感染症 エボラ出血病、クリミア・コンゴ出血病、痘そう(天然痘)、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱
二類感染症 急性灰白髄炎(ポリオ)、結核、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(いわゆるSARS)、中東呼吸器症候群(いわゆるMERS)、鳥インフルエンザ(H5N1)、鳥インフルエンザ(H7N9)
三類感染症 コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス
  • 例えば、病原性大腸菌であるO-157は、上記の三類感染症に指定されている「腸管出血性大腸菌感染症」に該当するので、これによる食中毒(細菌性食中毒)は、普通保険約款では補償の対象外になるものの特約で補償の対象となり、さらに食中毒以外の症状についても補償されることとなります。
●参考文献:
東京海上火災保険株式会社 編「損害保険実務講座7 新種保険(上)」(有斐閣、1989年4月発行)40〜44ページ
●参考文献:
大谷孝一 中出哲 平澤敦 編「はじめて学ぶ損害保険論」(有斐閣、2012年6月発行)256〜258ページ
●参考文献:
東京海上日動火災保険株式会社 編著「損害保険の法務と実務」(一般社団法人金融財政事情研究会、2010年7月発行)94〜95ページ

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